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女性泌尿器科医コラム

女性泌尿器科医コラム 頻尿や尿失禁 〜恥ずかしがらずに治療をしましょう〜
医療法人社団 邦生会
高山病院
泌尿器科医 中島のぶよ
*日本泌尿器科学会  専門医・指導医
*日本女性骨盤底医学会
*日本小児泌尿器科学会
*日本排尿機能学会
*日本間質性膀胱炎研究会
●いろいろな種類がある「頻尿」と「尿失禁」
「水仕事をしようとしたら急に尿意をもよおしてきた。」「家の前(トイレの前)で尿意が我慢できなくなった。」「咳やくしゃみ、坂道をくだる時に少しずつ尿がもれる。」「歩き回ったあとや夕方に、陰部に何か挟まったような違和感がある。」このような症状に思い当たる方はおられませんか?これは切迫性尿失禁や腹圧性尿失禁、性器脱の方がよく訴えられる症状です。成人の膀胱は300〜400ccの尿を、ゆったりともらすことなくためる事ができるのが正常の状態です。しかし膀胱が知覚過敏になると、尿が少したまっただけで尿意が生じ、頻尿や切迫性尿失禁などが起こります。また、尿道の力が弱く膀胱にたまった尿をせき止めておけない場合には、腹圧性尿失禁が起こります。このように「頻尿」「尿失禁」とひと言に言っても、原因が膀胱にある場合と尿道にある場合があり、両方の原因が重なっている方もおられます。私たち泌尿器科医は頻尿や尿失禁の原因をつきとめ、適確な治療をしたいと考えています。

●「過活動膀胱」について
最近泌尿器科医の中でも注目されてきているのが、「過活動膀胱」です。これは「強い尿意が急激にわき起こり我慢しがたい」という状態で、膀胱の知覚過敏のようなものです。我慢しがたい尿意切迫感があれば、失禁の有無に関わらず過活動膀胱といわれます。我が国の統計によると、40歳以上の男女全体の12%、80歳以上では35%の方に過活動膀胱の症状があるという結果がでており、潜在的な患者さんの数はかなり多いと考えられています。また臨床の現場からみると、小児のケースも多くなってきている印象です。注意が必要なのは、膀胱癌や尿路結石などの重大な疾患も過活動膀胱のような症状を呈する場合があるという点であり、気になる症状がある人は泌尿器科への受診をお薦めします。

●「腹圧性尿失禁」について
女性の骨盤骨は赤ちゃんを膣から出産するために、底抜けの形になっています。骨盤を下方から支えている筋肉や靱帯が出産のときに損傷し、さらに加齢によって弱くなってくると、尿道の締まりが悪くなります(分かりやすく言えば「大きな筋肉の弱体化」です)。また、閉経後女性ホルモンが少なくなってくると、尿道を含めた陰部全体の粘膜が痩せてきます。すると尿道がスカスカになって腹圧性尿失禁が起こりやすくなります(これは「小さな筋肉の弱体化」と説明しています)。

●「性器脱」について
「大きな筋肉の弱体化」によって骨盤内にある子宮や膀胱、直腸を支えられなくなり、あたかも分娩するがごとく膣から骨盤内の臓器が突出してきます。突出する臓器によって「子宮脱」「膀胱瘤」「直腸瘤」という病名がつきます。昔は「なすび」と呼ばれ、多くの女性が当然のように放置していました。しかし性器脱は放置すれば腎不全にもなりうる病気なので、専門医での治療が必要です。

●まだまだ少ない専門医受診
腹圧性尿失禁は、我が国の医師がまとめたデータで「3回以上の出産経験者の75%に腹圧性尿失禁がある」という結果があるほど実は非常に多い疾患です。もちろん出産経験がなくともすべての女性に起こりえます。また過活動膀胱による切迫性尿失禁も前述のように困っている人はたくさんおられます。尿失禁は実は珍しくない病気なのです。しかし女性が泌尿器科を受診するということはまだ一般的でなく、9割の方が「もう年だから仕方ない。」「恥ずかしい。」「何科に診せたらよいのか判らない。」という理由で受診するのをためらっておられます。
また性器脱については婦人科と泌尿器科、直腸外科の領域にまたがる疾患であるため、残念ながら総合的な知識を豊富に持ち合わせている医師は、泌尿器科医や産婦人科医の中でも少ないのが現状です。「かかりつけの泌尿器科(産婦人科)に相談したけどそのまま様子をみるように言われた」という方も多いのではないでしょうか。

●治療について
1.保存的治療
ほとんどの過活動膀胱や軽い腹圧性尿失禁は薬剤で改善します。具体的には膀胱の無駄な収縮を抑えて緊張をとる抗コリン剤や尿道の括約筋の締まりを強くする刺激剤などを用います。過活動膀胱の場合は尿意を我慢する膀胱訓練を、腹圧性尿失禁の場合は骨盤底筋体操を併用するとより効果的です。

2.手術療法
保存的治療で改善しない腹圧性尿失禁や性器脱は手術が必要ということになります。近年、多くの病院で尿失禁や性器脱に対して合成メッシュを使用した手術が行われていますが、異物を体内に埋め込むことに関連する粘膜の潰瘍や尿路結石形成といった合併症には何年経っても注意が必要です。当院では患者さんの身体にできるかぎり異物を残さないという方針で手術を行っています。尿道スリング手術は患者さん自身の筋膜を利用して尿道をつりあげる方法で、手術に使う糸も時間とともに溶ける糸を使用しています。手術時間は1時間30分ほどで10日間前後の入院が必要ですが、異物を使用することによる合併症の心配はありません。軽い腹圧性尿失禁には尿道周囲へのコラーゲン注入も行っています。手術時間は20分程度で、1泊の入院で可能です。性器脱に対しては脱出している臓器や脱出の程度、患者さんの体力に応じてさまざまな手術方法を選択します。術式に応じて4〜10日間程度の入院期間を必要とします。子宮脱にも対応しています。

困っておられる方は一度ご相談ください。尿失禁、性器脱によって生命を脅かされることはありませんが、日常生活が非常に不快なものとなっていることと思います。治療を受けることで「生活が楽しくなった!」「快適になった!」とおっしゃる患者さんの笑顔を私たちはおひとりでも多く見たいと考えています。
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